若者の手でよみがえった老舗旅館 吉田屋 山根多恵さん(島根県)

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若者の手でよみがえった老舗旅館

旅館吉田屋 山根多恵さん(島根)

●縁もゆかりもない若者が後継創業

 島根県は全国でも過疎化・高齢化が進んでいる地域です。世界遺産に登録されたことで有名な石見銀山に程近い温泉津も、高齢率40%を超えています。周りが廃業していく中で、前経営者であったご夫婦も70歳を超え、子どもも後を継ぐ気がなく、旅館吉田屋を畳むしかない......と諦めかけたところに、当時島根県の経営相談に乗っていた山根さんが引き継ぐことを決意したのです。

 「田舎こそ面白い試みをやれば目立つし、発信できるものがたくさんある!」と固く信じて2年前の秋から引継ぎの準備に入りました。2006年の1月からは経営を移行して、本格的に旅館の女将業が始まりました。


●新しい試みだらけの老舗旅館

  「24歳の女の子が女将に、料理長は23歳、仲居は大学生の旅館」といううわさは、地域のみならず全県に広がり、新聞・テレビなどにも取り上げられ、遠方からもお客様が来るようになりました。しかし、それに甘んじることなく、山根さんたちは次々と話題を作っていきます。

 前経営者の時よりも売上が平均2倍以上を超えて、スタッフにお給料も払えるようになった時点で、山根さんは「月曜から木曜まではお休みにしよう」と発案しました。週休4日制の旅館ではなく、休日は「地域貢献日」に充てようという考えです。
 結果として、地域の高齢化で誰も手がつけられない竹やぶを伐採したり、大広間を開放して地元の高齢者と運動をして汗を流したり、耕作放棄地になりかけた畑を手入れして自家製野菜を出す旅館としての付加価値をつけるなど、様々な試みが生まれました。


●年間100人の迷える若者を受け入れる

  「労働も寝泊りも同じ場所なので、四六時中いるとその子の特性が見えてくる」という山根さん。引きこもりがちだけど高齢者の話が聞き上手な子、機械いじりは誰にも負けない子、頭で考えるのは苦手だけれどもコツコツ作業はできる子など、いろんなタイプの若者の特性を活かせる働き方を提案しています。

  「学校に行って友達と遊んでバイトして...もいいけど、自分が成長したと実感したい」「就職活動に馴染まなくて一歩誤ればニートだった」。そんな若者が年間100人以上インターンで来ます。「自分とは何か」を探しにこの旅館で働きたい、と若者が集まってくるのです。


●面白がり屋が集まる場へ

 お客様の層も自然と変わってきているようです。1日16時間働いてもキラキラ輝いている若者たちを見せたい、という大学の先生がゼミ生を連れてきたり、過疎地での活性化について自分の意見を持っていそうな若者たちと意見交換をしたい、という農林漁業の関係者が宿泊兼視察で来たり、ここで働く若者たちに会いたくてこの旅館を選んでくるお客様が増えています。

 これまでの観光地の旅館は、温泉や部屋が立派、お料理が美味しい、女将のもてなしがいいなど、居心地のよさを提案するものが主流でした。全国・世界を旅慣れた人とっては、面白い人に会いたいというのが一番の目的になっているようです。

 中国・島根にある温泉津。それでもお客様が来るというのは、山根さんが当初抱いていた「田舎だからこそ面白いことを発信!」が成就している証です。


基礎データ
■ 正式屋号 有限会社 旅館吉田屋
■ 事業規模 旅館事業 2220万円+α地域活性化事業 (週末営業のみ)
■ 客層 地域活性化に興味があり学びを得たい方、食の安心・安全に共感される方、石見銀山・温泉津の世界遺産に観光にいらっしゃる方
■ 従業員 10名(アルバイト・パート含)
■ 設立年月 平成18年1月
■ 住所 島根県大田市温泉津町温泉津イ707-1
■ 電話 0855-65-2014

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