今、日本は、飽食の時代であるが、しかし一方で私たちが口にしているものは、自給しているものではなく、多くが輸入に頼っているのが現状だ。特に中山間地域といわれる田舎では、農業の担い手と期待される若者がどんどん都会へと流出し、畑は荒れていくばかりである。そんな若者を引き止めることも一つの手段かもしれないが、もはやそれでは追いつかない。だからこそ、今まで全く農業に関わったことのない人たちの中からも新たな農業の担い手となってもらえる人を必要としている。そのためは、農業に従事しようとする本人の意志だけでなく、周りの集落の理解なども必要であるだろう。また、農地を本当に保全し農業を営もうとする人ばかりではないかもしれないが、そのようなことを心配する前に、実際に挑戦してみてもらわなければ、ますます耕作放棄地が増えていくばかりだ。一人でも多くの人が農業に新規参入することで、日本の食料自給率を上げることが出来ないだろうか。
■新規農業参入への壁
農業は、新しいステージに移らなければならない。
「農業への新規参入」...具体的には、どのような手続きや準備をすれば、実現するのだろうか。今まで、全く農業に関わっていない人が新たに農業に入るにはどうしたらよいのだろうか。
まず、冒頭でも述べたように農業の経営能力は必須である。また、それだけではなく作物を栽培するという技術も身に付けなければならない。さらには、自分が農業を行う農地も自分で確保しておかないといけない...といったように、農業を始めるためは、様々な面からクリアーしなければならないことがたくさんある。もちろん、他にも規制や法律という面での壁があることも現実だ。
なぜこのような規制があるのだろうか。よくよく考えてみれば簡単にわかるのだが、これらの規制は、農地を守るためのものである。つまり、農地が宅地などに転用されることを防ぎ、農地が減ること自体を規制しているのだ。農地は国民の大切な食料を生産するための公共の財産だということ。確かにそのとおりなのだが、今やそのことに固執してしまうあまり、農業への新規参入を阻んでしまい、守るべき農地が荒廃してしまっているという、悪循環を引き起こしていることに気付かなければならない。
このような現状の中で、「リース特区」という規制緩和が実際にスタートした。農業生産法人ではなくても農地の権利を取得できるよ、ということだ。(尚、リース特区は現在、全国展開されているため、特区ではなくなっている)
この特区によって、農業への新規参入を視野に入れた経営を行う企業も増え、私たちPAグループもこのリース特区を使用して、荒廃していく遊休農地の保全をやってみないかとの提案をうけ、現在農業を経営している。そこでは、従来どおりの農業経営を目指すのではなく、食と農を結びつける、農業のインキュベーションセンターとしての役割を担うべく、農業の「研修」「研究」「実験」のステップアップの場を提供している。
ただ、このリース特区はもちろん制限がある。国が、耕作放置地や遊休農地を減らすことを目的としていることから、リース特区の区域となるのは、「耕作放置地・遊休農地などになる恐れのある農地が相当程度あるところで、市町村が農業経営の基盤強化のために作成する基本構想で定めた区域」となっている。まずは、市町村が、どのくらいの耕作放置地があり、どの区域をリースするのかを決定しなければならない。そうなると、リース特区に、積極的な市町村と消極的な市町村との格差が生まれ、自分の住んでいる地域の行政が積極的に推進しているかどうかで、農業に参入しやすいのかしにくいのかが変わってくるのだ。
さらに、もう一つ農業を行う農地については使用貸借による権利または賃借権の設定を受けることなど、農業委員会の許可が必要となる。農業委員会では、原則として、農地は農家同士の売買以外は認めていない。認めない理由は、食糧生産の場の「公共財産」という一面があるためであるが、農地を守るストッパーの役割を担う農業委員会と新しい農業を目指すインキュベーション組織とのバランスが今後重要になってくるのではないかと思う。