前向きな連携は人財持ちに、
そして地域の財(タカラ)に
WWB/ジャパン 奥谷京子
■20名のメンターが一同に会す
昨年12月はじめ、島根県大田市温泉津の旅館吉田屋において、1泊2日で会合を開いた。日ごろお世話になっているメンター(主に女性起業家)が北海道から福岡まで、約20名集まった。長年一堂に会したこのような集まりを持ちたいと思いつつ、実は場所とタイミングとがなかなか合わず、今回その思いがついに叶った。
1つはメンターと呼ばれる方々は経験を重ね、次の段階へステップアップしていこうという人たちなので、自分ががむしゃらに働かなくても他のスタッフに店番などを頼みながら外に出られる環境が作れていること、そして、何か次に自分たちで動いて行きたいという心を持ち合わせていること、さらに、それぞれの地域で思っている意識を惜しみなく共有し、また他の地域のことを学んで持ち帰って還元する気持ちがあること、そのようなメンバーに恵まれていたことが、今回うまく集まれた理由ではないかと分析する。
■連携とは簡単に言えるが・・・
都市と田舎の連携、隣県との地域連携、省庁間を越えた連携など、最近「連携」という言葉をよく耳にする。
たとえば、お金にしても小さい金額を方々にばら撒くという形よりもまとまって何か大きいことをするのも悪くないという考え方も出てきた。確かに農業の現場などを回っていると、「農村女性の起業講座」ということで県内あちこちの管内で講師を呼んで、心構えや衛生許可の話を1回聞き、漬物の講習をして終わるというパターン化したものが目立つ。しかし「明後日内装業者が入るんでこれからどうしたらいいでしょう?」という人と「余力でお小遣いが出来たら嬉しい」と思って夢を描き始めて何を売るのかもまだ決まっていない人とを一緒に集めて学ぶ場を開いてもなかなか成果があがらないのである。そういう意味では、これから始める人のコース、開業直前の人のコース、開業した後もさらに販路拡大に向けて取り組む人のコースなど、地域で限定するのではなくて、その人たちのレベルで区切るというやり方もあるのではないかと思うことがある。ここに知恵を出し、そのレベルの人たちを集めて、底上げをするようになったときに、その県内の指導者たちは一丸となるし、また来た人たちも同じ境遇にある人たちと共に励ましあう、これは二つの連携が同時に生まれるのではないだろうか。さらにこれを農業者というところだけに限定せずに「食」という枠にはめなおして一般の人たちをも結び付けられたら、レストラン経営者と農産物生産者との連携など、新たな可能性も生まれる。
が、残念ながら、自分の範囲を超えたところまで広げるのはなかなか難しい。一般の人まで広げると何の講座がわからなくなる、農業者の支援にならないのではないか、他地域の人を巻き込むと自分のところの商品が売れなくなる、地元にお金が落ちなくなる、など、不安が増長するとより地域・仲間の中で固まっていこうという傾向が強くなる。本当は他を入れると自分が弱くなるというのは、そもそもその商品力や自分たちの販売の努力などがきちんとなされていたのか、ということを問いただされることになる。昔はこれほど情報や物流が発達していなかったので他地域のことも見えなかったかもしれないが、今はネット検索してお取り寄せすれば比較が出来てしまうから手は抜けない。むろん、情報自体を封鎖することなども考えられない。
■"前向き"連携に何が必要なのか
「共生はときに共死もあるのよ」と先日の研修会で、いつもWWBジャパンのスクールでマーケティングの講師を担当してくださる不破さんがおっしゃっていた。ネットワークだ、連携だ、といって、誰とでも組んだらいいということではなく、共倒れも仲たがえも覚悟の上での繋がりなのだ、と。恋愛や結婚ではないが、「この人とだったらどんなに貧乏になっても死んでもかまわないっ!」と思えるくらい惚れ込めるものというのが何なのか、それを考えたときにキーワードが思い浮かぶだろう。
1つは尊重。どちらかがどちらかを言いなりにさせるとか、頼りにするということではなく、どちらもが良いところを引き出し合えるかどうか。そしてリスクと心の底からの信頼。一方の手柄、他方の負荷ではなくて、最近私たちのグループの合言葉にもなっている「感謝とお返しの気持ち」を持ちつつ、一緒に体も頭も動かしていけるかどうか。そして素直に喜び合えること。「評価」というと悪いことを指摘しあうイメージが先行するが、まずは「やったぁ!」とハイタッチできる常にポジティブでいられる間柄かどうか、その上でもっと改善できることをお互いにストレートに言い合えるか、そして最後に一人一人が自分の居場所をチームと思えるかどうか、これが条件だと考える。
連携がうまく行っているところは、来るもの拒まず去るもの追わず、通気性のよさを感じる。そしてその団体や地域のファンに取り込んでしまえば、一度遠方から呼んだ講師への投資も決して無駄ではないと振り返ればわかる。販路開拓など、自分たちの力だけではなしえなかった結果があとからついてきている。このような前向きな連携が広がっていけば、大きなうねりを作れる気がして、2008年はメンターのいる地域で動きたい人たちとこの連携を実験していきたいと思っている。